「無事で良かったな。いいのか？さっきの奴行っちまったけど？」

「ん？ああいいんだ。アレ俺の父さんだから。」

「…え？何、どういうことだよ。」

俺は笑いながら響に簡単に説明をする。

「まあ、そういうことだから、こいつと花火を見てくるよ。心配かけたな。」

「そっか、杏ちゃん、今度暁が遊んでくれなかったら俺が遊んでやるから言ってね？」

杏に微笑んで頭を撫でようとする響に俺は思わずデコピンをしていた。

「響、杏にさわんな。バカがうつる。」

痛いって抗議されたって知らないね。俺も今日は２回もお前に叩かれたんだし…。

笑いながらみんなに別れを告げると、一際明るい花火の数々が夜空を彩った。

フィナーレなのだろう。

色という色を集めたような炎の華。

一瞬で消える為だけに作られる夏の夜の美しい幻。

俺に寄り添う杏の顔を鮮やかに染め、暗闇でもひと時その表情を窺うことが出来る。


杏が何かを呟いた。


花火の大音響にかき消され聞き取れなくて耳を寄せる。



ふいに頬に温かく軟らかいものが触れた。