【中編】夢幻華

父さん一体何をしたんだよ?右京父さんがここまで意地になるってどう言う事だよ?

俺の視線を受けて父さんはコッソリと俺に耳打ちした。

「ずっと前にさあバツゲームで蒼にキスしたことあるんだよね。ホッペにだけど。それをすげ―根に持っているんだよ、右京のやつ。そんな事気にしてたら僕だって茜のファーストキスがあいつだって事根に持ってやったほうがいいのかなあ?」

かっ…母さんのファーストキスが右京父さん?
何がどうなっているんだ?もしかして三角関係だったのか?あ、いや、蒼母さんもいるから四角か?どうでも良いけど右京父さん本当にホッペのキスを根に持っているのかな?

なんだか龍也みたいな性格だなあ。

「晃君が暁のお父さんだからパパはあたしと暁が結婚するのは反対なの?」

事の成り行きを見守っていた杏が悲しげに涙を溜めて右京父さんを見ていた。

俺は杏の肩を抱いてそっと涙を指で拭ってやると、大丈夫だと伝えるように頭をクシャ…と撫でた。

子どもの頃から杏をなだめる時の俺のクセ。

最近これが父さんが朱音によくやっているのを見て、無意識に受け継いだものだと知った。

どう考えても俺の中の父さんの血を消す事なんてできないんだ。

右京父さんに諦めてもらうか杏をさらうしか方法は無いんだよなあ。