リビングへ戻っていた聖良ちゃんに杏はそのまま部屋へ戻ったと聞いて、俺もすぐに部屋へ戻った。
ドアを開けると杏は長い髪を広げるようにして目を閉じてベッドに横になっていた。

眠っているのかと覗き込むと俺の気配を感じたのかパチッと目を開けてゆっくりと体を起こす。
杏の腰まである髪がその動きにねっとりと絡みつくようについてくるさまが妙に艶かしくて身体が一気にざわめき立った。

「杏?どうした。ぼうっとして。眠いのか?」

どこか焦点の定まりきらない杏の瞳を捕らえて覗き込む。不安げにゆれる瞳は潤んでまるで俺を誘っているように見えた。

「暁…。明日の朝になったら今日の事は全部夢であたし達はただの従兄妹になっているって事ないわよね?」

「怖い冗談言うなよ。…そんなことになったら俺かなり凹んでしまいそうなんだけど?」

「だって怖いんだもん。眠ってしまったら本当に終わってしまう気がして。」

杏を抱き寄せ腕にしっかり抱きとめると細いからだが小刻みに震えているのが分かる。

何をそんなに不安に思っているのか分からない。

俺の気持ちはちゃんと伝えたつもりだし、これ以上ないくらい杏だけを愛しているのに、杏は何故こんなにも不安を感じているんだろう。