「暁先輩はね、あたしが龍也さんと付き合い始めた頃、もうあなたしか心に住んでいなかったのよ。
だからあたしはずっと杏ちゃんがどんな女の子なのかすごく興味があったの。
今日あなたに会って、分かったわ。暁先輩は本当にあなたを大切に思っていたのね。
それはもう、宝物のように…。
だからね、あなたを傷つける事は絶対にしたくないはずよ?
あなたの心の準備が出来るまできっと待っていてくれるはずだから、心配する事ないと思うわ」

「でも…暁は今夜…その…覚悟しておけって…」

顔が真っ赤に染まり耳まで熱くなっているあたしに、聖良さんは『まったく男って…。』とぼやいた。

「杏ちゃん。暁先輩を信じていいわよ。あなたに一度や二度拒絶されたからって、杏ちゃんを嫌いになるようなら、こんなに長くいつまでもあなたのこと想っていないわよ。とっくに諦められたはず。そうでしょう?自分に自信を持っていいのよ?」


聖良さんの言葉は胸に染み込んで、あたしの波立った心を静めてくれるようだった。

暁はあたしを誰よりも大切にしてくれている。
それはあたしが生まれたときからずっと変わらない事も分かっている。

それでも不安なのは暁の大学の綺麗な大人の女性たちに人気のあるのを知っているから。

花の蜜に蝶が集まるように暁の周りに綺麗な女の人が常にいるのをあたしはずっと見てきたから。

そんな女性たちより暁を惹き付けられる魅力が自分にあるとは思えないから不安なのだと思う。

暁に全てを捧げたら…あたしはその不安から解放されるのかな?

ねぇ…暁。


あたしは誰もがあなたに相応しいと認められる彼女になることができるのかな?