「好きになるはずなかったのに」


「僕たちも…そんな瞳が欲しいですね。」
 

露子は一気に血の気を抜かれた。

今しがた露子の背後に居たと思われるこの男は、露子の真横へと場所を移していて、露子といったら至近距離で顔を覗かれているのにも気づかず、妄想の一部始終を淡々と語ってしまった。

目元の筋肉がぴくぴくと痙攣した。
 


男はスラッとした腰を屈め、
もう一度露子の顔を覗き込もうとして、露子はビクリと後ずさりをしてしまった。その姿に男は一旦驚きを見せたが、ふふっとほほ笑んだ。



「大丈夫。

 ひいてませんよ?」


「!?」


露子はまともに男の顔を見た。


やや長めのダークモカな髪にパーマをかけ

伏した目の奥二重が奇麗な

丹精な顔立ちの男だった。


スーツを着ているしネームプレートも首から下げている。


明らかにここの関係者だ。


露子は名前を見ようと目を細めると

男はふふっと微笑み優しく言った。


「“つぶらや”です。ほら……この写真のところに……」


写真の下のプレートに目を移すと

“円谷 奈津哉”とあった。


ということは……


「じゃぁ……この写真……」


露子は頬を赤らめ、あわあわした。