Kiss★恐怖症

「ったく―…。とりあえず、お前部屋戻れ」


「えー。せっかく来たのにー」


兄貴のくせに弟いじめー?、とかなんとか言って。


春樹くん。


やっぱり、年上なんかじゃない。


…正真正銘の弟だ。


見た目は年上だけど、性格は弟。


「いいから、かーえーれっ!!」


そういいながら、春樹の背中を押し、ドアへと連れていく。


「はいはい。わかりましたよ!!」


押してくる直樹を避けて、自分で歩く。


部屋から出る直前。


首だけ後ろに振り返り。


「じゃあまたね。星蘭"さん"」


そう言い残し、部屋から去っていった。


さっきの騒がしさはなくなり、静かな時が流れる。


「ごめんな。いきなり」


「別にいいよ。キスとかはされなかったし」


そう。


抱きしめられただけ。


キスがされなかっただけでよかった。