「ねぇ、本当にこれが水野先生の家なの……?」



「………多分……」



2人の目の前には、見事な日本屋敷があるのだ。


水野は一人暮らしというが、明らかに一人暮らしには大きすぎる家である…。



2人が呆然とすること約5分………



「そんなところでどうしたのかな、お二人さん?」



「こんにちは、水野先生!!」


「み、水野先生……!?」



なつめは普通に…いや、動揺を隠して平然と挨拶をしたが、さくらは既にフラついている。



……水野は黒い着流し姿だった……


思わずなつめもドキッとしてしまった。


さくらは言わずもがな……である。



「さ、2人とも早く宿題片付けよっか……さくら…どした??」



着流しかつ笑顔の水野に、さくらは限界だったようだ。


フラつくさくらを何気なく支えて水野は言った。



「……やっぱり変だったかな、この格好。夏祭りの時にさくらが和服が好きって言ってたから…」



「いえ!!…その……あまりにも格好良くて、正面から見られなくて…。すごく素敵です!!」



「さくら……」



ただでさえ暑いのに、さらに暑くなったような気がしたが、なつめは目の前の2人があまりにも幸せそうだからか、猛暑は不快ではなかった。



2人の花吹雪は、もう一人の刺客が現われるまで舞い続けた。