【伊達】


待ちに待った花火が始まった。


真っ暗な空に咲く一瞬の華


決して手が届くことのない華


そして、偽りの華……



ふと気になって隣の猿飛を見ると、今まで見たこともないほどの哀しそうな表情をしていた。



お前は一体何を考えている?

花火を見て何を思ってるんだ?


実は見てしまったんだ…



終了式でお前が座っていた所に、桜の花びらがあったこと。


そして歩いた所にも落ちていたことに…


夏に咲く桜……いくら何でもおかしいだろ?


…でも俺は何も聞かない。

いつかお前が話してくれるまでは…

まぁ、自分のことをあまり話さないお前だから期待は出来ないけど…


でも、辛いときぐらい頼ってくれてもいいだろ?

俺はお前の担任だしさ…


それに何でか分からないけど、俺はこの情景を知ってるんだ。


ま、間違ってもナンパとかじゃないからな!?



俺がいろいろと考えている内に、いつの間にか花火はクライマックスだった。



「先生、最後の花火ですよ!!」



そう言われて空を見る。


そこには最後にふさわしい巨大なしだれ花火が咲いていた。