「…俺たちの連れに何か用?」
「是非とも聞きたいね」
私とさくらの前に立ちふさがったのは、伊達先生と水野先生だった。
「「…な、何でもないッス!!…し、失礼しましたァア――!!」」
走り去ろうとした男たちに、先生方2人は何かささやき、それを聞いた2人は一目散に去っていった。
「み、水野先生…!!」
「大丈夫でしたか、さくらさん?」
「はいっ!!あ、ありがとうございました!!」
…本当に水野先生と話しているさくらは、女の子らしいと思う。
もうすぐ花火だということで、私たちは再びペアに別れた。
さくらと水野先生がいなくなってから、一言も話していなかった先生が言った。
「…大丈夫だったか?」
「…今回は少ししつこくて戸惑っただけです…。それに、浴衣だと一本背負いできないし…」
「……浴衣で一本背負いは止めておけ…」
こんな負け惜しみみたいに言っていても、助けてもらったのは事実だ…。
「その……」
「どうした〜?猿飛〜」
「…あ、ありがとうございまし…た…」
先生にお礼を言うのが、何だか恥ずかしくて、下を向く。
…何も反応がない……
おそるおそる顔を上げて先生を見ると、先生は笑っていた。
「な、何で笑うんですか!!」
「ハハッ…あの猿飛が…っ、素直に礼言うなんてっ…ハハッ!!」
「…私だって礼儀は分かってます!!……先行きますから……」
先生に背を向けて歩きだそうとすると、先生が追い掛けてくる。
「待てよ、猿飛〜!!」
あまりにも必死な先生がおかしくて、私は振り返った。
「早くして下さい……また迷子になりそうですから」
「っ……!!全くしょうがない奴だよな、お前は…」
そういって先生は自然な動作で手を差し出してくる。
「…ほら、行くぞ、猿飛!!
「了解です、伊達先生」
何のためらいもなく手を取ったのは、きっと夏祭りのせい…
先生は子供のような笑顔だった。
