生きていたって両親や友人や職場に迷惑をかけるだけだ。

今日帰ったら死のう。

仕事が終わり帰り道に通る歩道橋から下を眺めた。寒い日だった。初雪が降った日だった。

「なんにも上手くいかない人生だったな…」

ヒロは飛び降りる前に自分の人生を簡単に振り返った。昔から人と接するのが苦手だった。容姿が良くなかった。頭が悪かった。学生時代は毎日イジメにあった。社会人になり就職したら仕事はミスばかりで上司に迷惑社員と言われた。

歩道橋の手摺りを掴む両手に力をいれた。視界が滲んだ。涙が風に舞った。


サ ヨ ナ ラ


声にならない声でつぶやき 鉄棒を一回転するようにして手摺りを離しヒロは地面に向かった。


落ちていく時間がひどく長く感じる。

違う…。


長すぎる…。


さっきから淡いピンク色の空間を落下している!

いや、これはあの世?私は死んであの世を落下しているのか?

ト マ レ !!!!

耳に透き通る綺麗な声が響いた。その途端に落下は止まり体がフアリと浮かんだ。目の前には…男が立っていた。男は長身で全身黒ずくめだった。髪は肩まである長髪 手足が長く黒いスーツ 黒い靴 だから余計肌の白さが際だっていた。顔のパーツは完璧なくらい美しく 瞳の色も漆黒だった。


ナゼ コノ空間ニ マヨ イコムコトガ デキタンダ?

ヒロはその透き通る綺麗な声に 美しい目の前の男に恋してしまった。