俺が食堂へ行くと、ルーファスが一番奥のテーブルに座っていた。
向かい側でホープが食事をしている。
ルーファスは俺に気づくと軽く手招きをした。
遅れてホープも俺をチラリと見た。
彼は俺に微笑みかける。
俺は彼らを無視する。
カウンターで、トレィにフォークとナイフをとった。
「パンと玉子。あとコーヒー」
キッチンの奥からシェフが近づいてきて、俺のトレィの上に置いた。
適当なテーブルを選んで、一人で食事をした。
焼いた玉子は普通に美味かった。

ホープは食堂をでていった。
予定のない俺は煙草で時間を潰すことにした。
なぜか、ルーファスは俺の隣にやって来て、椅子に腰かけた。
「いいやつだな」
「誰が」
「ホープだよ。ああいうやつを正義っていうんだろうな」
ああ、と軽く受け流すと彼は舌打ちをした。
だいたい力で兵士をA,B,Cの3階級に分類して、下っぱを駒同然に扱う時点で、この会社に正義もクソもあったものかと俺は思う。
「なんでも強けりゃいいってもんじゃねえぞ?大事なのは心がけだろ?まったくお前は血に飢えたオオカミみたいな顔しやがって」
「俺はこっちの生活が長いもんでね」
煙を吐き出して、ため息をつく。
「そうだな。そろそろお前は相棒に毒されてる。あいつは女じゃねえな。美しさがたりねえよ」
彼は雑誌を広げた。
「特集見たか?North支部の“misuthia”。俺も見に行きてえよ」
雑誌の一面を飾っている美女三人組。
くだらない。
残念ながら俺の美学にあてはまらない。
「あいつの方が綺麗だ」
沈黙。
「お前は変わり者だな」
「好みの問題だ」
ルーファスは雑誌を見たまま呟く。
「…あいつはまだ帰って来ないのか?」
「ああ」
「…諦めたらどうだ?今度はもう1ヶ月も帰ってこねえ。いい加減死んだんだろ」
「関係ない」
短くなった煙草を揉み消す。
「そうだな」
彼は立ち上がる。
「任務か?」
「そうだよ」
「ああ、じゃあ気をつけて」
「お互いに」
彼は微笑んだ。