運が良かったのか。
こいつの実力なのか。
巻き添えくった七人の中でこいつはたった一人、生きている。
土と油と血糊で汚れている。
若くて幼い。
白く細い腕は少年という言葉を思わせる。
さすがにぐったりしているC級兵を肩に担いで戦場の外にでた。
まだ殺し合いは続いている。
彼女も。
まだそのど真ん中にいるだろう。
俺は戻らない。
加勢しない。
彼女の指示であり、俺の意志だ。
所詮俺はマシン相手にしか戦えない。
マシンの囮になって、戦線の隅っこでしか戦えない。
あの戦場で俺がぶっ放せば、味方の巻き添えが多すぎる。
俺は構わないのに。
彼女は許さない。
俺は血塗れになって帰ってくる彼女を迎えるだろう。
時々それさえ叶わなくても。
俺は従順に彼女を待ち続けるだろう。
なんとも滑稽な話だ。

C級兵に応急処置を施す。外傷はほとんどない。
内蔵系が傷ついているのかもしれない。
少なくとも骨折はしているだろう。
WG社に入って興味もないことをたくさん覚えた。
その分、世界がくだらなくてつまらないものだと思う。
ようになった。

俺は透明になりたい。
ずっと
ずっと
遠くて高いところへ行きたい。
誰のためでもなく、
自分のために、
ただただ純粋な気持ちで戦いたい。
わかってはくれないだろう。
構わない。
俺は真っ黒に汚れて、ゴミのように沈殿してしまった。
地面に転がり踏まれる幾つもの腐った肉体と何も変わりはしない。
ほんの少し前まで肉体の内側から輝きを放っていた命さえ、俺の血に濁った両の目玉には淀んで見える。
俺は人間。
人間。
人間らしさを。
忘れた。
人間。
それが俺達の生き方ならば、俺は一生平和を望まないだろう。