帯電グローブを装着。
敵は近い。
前線が歪む。
1つ。
1人。
小さな影が、敵陣に突っ込む。
彼女の周りだけ、ぽっかりと空間ができる。
彼女の周りは赤い円。
描く。
俺も1人だ。
ビル群の上。
地上を這う彼女よりずっと空気が乾いた場所。
俺の敵はずっと固くて大きい。
悪趣味だ。
近くの敵は三体。
ビルの上から滑らかに飛び降りる。
地面ぎりぎりで磁界をチェンジ。
俺は再び上空へ浮かび上がる。
思い切り空気を蹴って地上へ加速。
左手を解除。
即座に電流が流れる。
そのままマシンの上に着地。
帯電した左手を叩きつける。
爆発音。
黒煙。
爆風。
俺は空へ。
高く、高く。
マシンが地上で俺の下に集まってくる。
全部で7体。
どれも脳ミソのない雑魚ばかり。
地上から放たれる銃弾をひらりひらりとかわす。
左手は解放状態。
溜める。
溜める。
溜める。
まだだ。
サッカーボールほどの大きさになった電流の塊が俺の手のひらの中で行き場を求めてバチバチと火花を散らす。
全部まとめて壊してしまおう。
俺は時々思う。
このままこの世界、まるごと壊すにはどれくらいこうしていたらいいのだろう。
どれだけ溜めればこの世界は吹っ飛ぶのだろう。
俺は左手を振りかぶる。
ドクドクと生き物のように波打つ塊。
とっくにサッカボールを通り越して。
フラフープサイズ。
地上を確認。
多少C級が巻き込まれそうだが、まあいい。
俺は地上へと塊を放つ。


爆発音。
爆風、爆風、破片。
マシンはすべて砕け散った。
巻き添えくったC級兵は七人。
俺は地上へ降り立つ。
空気が腐っている。
マシンの油と死臭。
醜い人間の臭いだ。


六人は死んだ。
俺に殺されたわけだが、どのみち、近いうちに死ぬ予定だったのだろう。
それが今だっただけだ。
注意力のない奴が戦場で生きていられる時間は短い。
人間の一生は案外呆気ないものだと思う。