ナツは美容師と言う事もあり、容姿こそ華やかで喋り方もチャラいが、内面はと言うと昭和のヒーローのように熱く、正義感が強い。

高校時代、クラスに人の輪の中に入るのが苦手な女の子がいた。
修学旅行の班を決める時に何も言えないでいるその女の子にぱっと声をかけたのがナツである。

「ハルちゃんが入ってくれると春夏秋が揃うから一緒の班にならない?」
「え?」
あまりにも脈絡のない誘い方に驚く私をそのままに、横を通り過ぎる男子に声をかける。
「あ、冬野ぉ、修学旅行の班決まった?まだだったら来て!冬野が入ると春夏秋冬揃うのー。こっち足りないからあの辺のあぶれてる男子連れてきてよ」
「マジで?なんか面白いからそっち行く」

それが私とナツの出会いであり、この四人が親しくなるきっかけだった。 

そういうナツを知っているから、だからナツがしょうもない男に泣かされるとついイライラしてしまうし、振られたと連絡が入れば朝まで付き合ってしまう。

実はその事について密かに冬野君に相談した事もある。
男目線で見て、ナツがああも浮気される理由はどこにあると思いマスカ?とかしこまったせいで若干噛んだ私に突っ込む事もなく冬野君はこう言った。

「ナツは華があるからなぁ。分かりやすい魅力があるといろんな奴が寄ってくるから」
「それだけで浮気さちゃうの?」

私は不本意な色を含めた声で反問する。

「その中で傷つかないように自分で防衛策を講じればいいんだろうけど…ナツは優しいからな」

なるほど。
冬野君の言わんとすることはことりと私の腑に落ちた。

それと同時にこんな話にちゃんと付き合ってくれる冬野君も稀有な人だと思い、当時冬野君の恋人であったアキの審美眼を賞賛した。

 だからナツがこのセリフを吐いた時にはちょっと黙ってられなかった。

「だって浮気は私のせいじゃないんだもん。男はみんな浮気するんだもん。きっと冬野だってきっかけがあったらするんだよ」