そんな、俺から見ても怖い雪村さんだが、お団子は別段動じる事もなく、あ、そうですよね、と言った。
まるで経験豊富な保険の外交員が不利な質問を受け流すみたいに。

「忙しい時にすいません」
お団子は丁寧に頭を下げ、
「私が用があるのはこちらの方なんで良ければお先に戻っていらして」
と、おばさん臭い口調で言った。
幾つなんだこの子。

「い…いや、私もいますけどぉ…」
年下だと思っていた子がおばさん口調だったせいか、雪村さんはいささかたじろぎ、しかし何故か一緒にいる宣言をした。
「や、いいよ?遅くなっちゃうといけないし」
俺が雪村さんに言う。
「ううん、いいです!私、先輩と一緒にいるんだもん!」

雪村さんはそう言って俺にくっつく。
俺はちょっと離れた。

「ごめんなさい、で、なんでした?」
この場を仕切り直し。

俺はお団子になるべく話しかけやすそうな表情で話を促す。
お団子は、はい、と小さく言って、大きく息を吸うと、俺の目に静かに視線を重ね、口を開いた。