同時に、僕が誰かも分からなくなったようだ。



家の隅で小さくなり、



時々音をさせたと思ったら、



僕が開けたカーテンを閉めていた。



「冬美、明るい方が良いだろう?」



と僕がつぶやくと、




目じりにしわを作った冬美は、



静かに作り笑顔で答えた。




その笑顔はとても気味が悪かった。



妻のことを気味悪いと思うなんて、



昔の僕なら、信じられないことだった。



誰にも言えなかった。



そんな軽薄な人間だと思われたくなかった。