二重世界

「嘘……でしょ……?あれは…」


「お嬢さん、ありがとうな。勇気あるね」


「へ!?あ、ああ。咄嗟に……」


私が呆然としていると、男性が話しかけてきた。


「本来なら、俺の姿を見た君の事は消さなきゃならないんだが、命を助けてくれた礼に見逃すよ。ついでにここを出るまで一緒にいよう」


男性はニコッと微笑んだ。さらっととんでもない事を言っていたが、人懐こい笑顔に安心感の方が勝った。


年齢は私より少し上くらいだろうか。目が青いから日本人じゃない?
多分こういう人を‘イケメン'と言うんだろう。


「ほら、立てるかい?」


「あ、ありがとうございます」


私は、男性の伸ばした手を掴んで立ち上がろうとしたが、ガクッと膝が落ちた。


「あ、あれ…?足に力が……」