二重世界

男はスッと拳銃を出し、目隠しをされた男性のこめかみに拳銃が触れる。


(嘘!?目の前で人が殺されちゃう……!)


「じゃあな」


「く、くそ……!」





「やめて!!」





私は衝動的に叫び、体当たりをした。


「何!?」


男は前のめりに倒れたが、すぐにこちらに拳銃を向けた。
手で顔が隠れてる。


(やっちゃった…!つい……。どうしよう、これから……。そうだ!この人の目隠し!!)


私は咄嗟に男性の目隠しを外した。


「ありがとよ!!」


「ちっ、まずい!!」


パスッ!パスッ!


乾いた拳銃の音が鳴り響く。


撃たれた……?
いや、体には痛みがない。ふと顔を上げると、いつの間にか手足の拘束を外した男性が私の前に立っていた。


「ち、仕方ない!」


男はそう言い残し、突然姿を消した。


「‘あっち'に逃げたか」


姿を消す一瞬前、私にはかすかに‘あの男'の顔が見えた。