「無理するな 心臓によくない」
「??意味分かんない・・・私、無理してないし・・・」

「自分の体、一番分かってんだろ!」

目の前に居るのは担当医
私は患者

入退院を繰り返した青春時代からの長い付き合い

お互いのことを嫌というほど知り尽くしている

半年前まで恋人だった

別れたからと都合よく担当医が変わるわけでもない

具合が悪ければ診てもらうのは彼

彼の浮気を察知して別れを告げた日、「嫌なら他の先生に診てもらってもいいから」っと・・・

浮気を弁解するでも無く、ただ患者と医者の関係だけを気遣って言われた言葉

そんな他愛もない男女の理由で医者が患者を放棄したり、患者が医者を選んだりするのは嫌い

割り切り診察に行けば唐突に放たれた言葉


「具合悪いときに無理して俺の診察に来て、余計悪くなってりゃ世話ないわな」

聴診器を外しながら呆れる彼

「発作止め打つから腕出して」
「・・・」

「早く」
「いや・・・痛いし・・・」

「ったく、子供か!」

呆れる彼の言葉に睨みを返せば、彼はそんな私の目を真っすぐ見る

「涙目になってんぞ!」

からかうように言われ悔しくて腕を出す

性格を分かり切ってる発言に流され腕を出したことを注射の痛みで後悔する

「痺れてないか?」
「ん・・・」

「液入れるぞ」

シリンジが押されると痛みが増す

「発作止めの時だけ素直な顔するのな お前・・・」

注射器をトレーにおいて注射部位を揉む彼の手が温かい