「新三年生頑張れよ」


新、三年生か…。


颯太兄がいない学校なんて生きている心地しないのわかってんのかなぁ。



「ねぇ、颯太兄?」

「ん?」

「卒業した後も、こうやってさ話せる?」

「………」

「颯太兄が、今すんごい人気があって仕事が忙しいのはわかるけど、会えるよね?電話とかじゃなくて」

「…………」


……なんか言ってよ。


「ねぇ、颯太兄?」


"うん、会えるよ"って言って。


"何言ってんだよ。当たり前じゃん"って、笑ってあたしの頭撫でてよ!

颯太兄!


「…悪ぃ、無理かも」


……あぁ、



やっぱり、手の届かない存在なんだね。



こんなに近いのに



触れているのに




遠い、



果てしなく遠いんだ…。


「颯太兄の馬鹿!大っ嫌い!」

「ちょっ!おい!蜜柑!」



颯太兄の手を振り払って2階へと駆け登る。


自分の部屋に入ると顔に枕を押し付けて泣いた。




颯太兄…。


あたしが馬鹿なんだよね。



1番大切なことを聞き逃していた。









「…えっ?!今週の日曜日に?そんなに急かさなくても」

「うん、だから卒業式の日は東京から通うような形になるかもしんない」








馬鹿だったよ、颯太兄。