あみから試験を控えているから会えないと言われて

「勉強みてやるから」という理由をつけて家に押しかけた


勉強を見てやるというのはあながち嘘ではないけれど、さきちゃんのことが気になって仕方ないっていう魂胆もあった

あみの部屋で少女マンガを読みつつたまに勉強を教えてやったりしていて、ある程度時間が過ぎると「お茶にしよっか」とあみが台所へと行ってしまった


しばらくすると足音が階段をあがってくる

飲み物を持って歩いているような速さじゃない、なんだか重い足音に直感して部屋のドアを開けた


やっぱり


そこに立っていたのはさきちゃんで、少し縁の赤い目を丸くしてこっちを唖然と見ている

俺も驚いた風を装ったけど、彼女の肩先にふと視線をやってすぐにそんなよろいは外れてしまった

生々しく赤くなっているアザ

ちょっとぶつけた程度には見えない

ましてやそうそうぶつける位置でもない


俺が問いただしても、彼女は頑なに口を閉ざしたまま部屋へと逃げていった


もう疑う余地はない

いつから彼女はこの痛みを一人で抱えているんだろう

相談できる友達はいるんだろうか

まだ数回しかあったことはないけれど

愛想笑いや会釈以外で彼女の笑顔を見たことがない

ちゃんと笑うのかな??



この隣の部屋で、君は傷だらけの心と体で何を考えてる??