熱めのお湯を頭から容赦なくかぶって、浴槽の中でひざをかかえた

そのひざにあごを乗せると、鼻の下までお湯が迫ってくる




好きと言われた

好きと言った




指を絡ませて彼と手をつないだ

ひざを抱く指にぎゅっと力がこもる


顔を傾けると片方の耳がお湯に浸かった


『守ってやる』


そういってくれた愛しい指を一瞬で手放してしまった

お湯に浸かったほうの耳から水の音が聞こえる
表現できない深い音




弱いのは、女だから?

それとも弱いから、女なの?



手放した手がもう恋しくて、アタシの目から涙が顔を伝った


暖色のお湯に、寒色の涙がなんども溶けていく



熱いお湯がぬるくなるまでそこに体を沈めて、まことの匂いを消すように全身を洗うとアタシは浴室を後にした




誰にも目にふれることのないアタシの静かな部屋

アタシを包んでくれるのはこのベッドだけ

ひだまりができてあたたかくぬくもったベッドにアタシは体を横たえた

自然とまぶたが落ちてくる



夢を見なくて済むかも


最後にそう思った