「別れ話くらい、一人でできるだろ?ガキじゃねえんだから」



自分のケリくらい、自分でつけなきゃ……

アタシは足を一歩踏み出した

それを確認したまことがアタシの前で背中を見せる



車のキーを上に放り投げてはパシッとつかむまことの後ろについて歩き始めた


一度振り返ったけど、とうまの姿はやっぱりまだ見えなくて……


とうまのことを信じてるのに、さっきまことに言われたセリフも胸につっかかった



暗くなりはじめた空、強くなる風に揺れる葉の音がまたアタシをぞっとさせる

さっき語りかけるように感じたのは予兆だったのかな

木々はアタシに“早く帰れ”と教えてくれてたのかもしれない



自分の今の行動が無謀のように思える

でも、自分のことくらい自分でできないと…と勇気を奮い立たせる

弱いだけの女も、自分で決断できない女にもなりたくない

もうイヤだ



車に乗り込むと「どこに行くの?」とおそるおそるたずねた


「ゆっくり話ができるところ」


そう答えられる


またほんの少し恐怖がアタシの背中に襲い掛かってきたけど、大丈夫


まことの高級な車が音も立てずに走り出した