彼の前に立つといきなり肩口に顔を寄せられて犬のようにアタシの匂いをかぐような仕草をした


「男の匂い」


声だけでこんなに人を凍らせることなんてできるんだ

男の匂いなんてするわけがないってわかっているのに声が出ない


「俺の情報収集能力なめんなよ」


やっぱり、昨日のアタシの姿を見たんだね、まことの友達は・・・・

空気より軽い口は軽蔑に値する



「否定もしねーのか」



「アタシね」

まことはアタシが口を開いたことに驚いたようだった

暴力を振るわれだした頃からアタシはまことに意見することなんてなくなっていたから・・・


「アタシ、別れたい・・・・」


「は?」


何を言ってるのかわからないとでも言いたげな表情のまことが「ちょっと来い」とアタシの腕を引いた