最寄の駅へ到着したことを伝えるアナウンスが運よく流れてアタシは立ち上がった

ズキンとふくらはぎに激痛

次の一歩を少しとまどうくらいの痛みに焦る

足をひきずるようにして電車を降りた


エレベーターに乗れば衝撃もましだったかもしれないけど、涙目の自分をごまかしたいのと、荷物を抱えたおばあさんがエレベーターを待っているのが見えて、階段をチョイスした

一段一段がけっこう響く


まるで階段をはじめて下りる子供のように手すりをつかんでゆっくり降りていく


いつもより遠く感じる改札口までの距離を確認するようにそちらに目をやると、その奥に柱にもたれて立っている姿


とうま・・・くん??


人目をひく格好のいいルックス

なのにそんなに悲しい顔をしているのはなんで??

遠目にもその横顔は何かを考え込んでいて

一点をみつめてかたまっている彼から目がそらせない


びゅうっと強い風をともなってホームに電車が入ってくる音

雑音まじりに流れるアナウンス

その音に目が覚めたようにこちらを見たとうまくんと目が合った


手すりから手を離して、なるべく普通を装って再び階段をおりていく

もたれていた柱から背中を離して二本の足で立つ姿

アタシは口元にちょっと笑みを浮かべて、右手の指先でちょっとおでこを撫でて視線をそらしたけど


やっぱりまたとうまくんを見てしまうから


さっき受けた罰すら忘れて


アタシは痛みを隠して微笑んだ