ギシギシひずむ椅子に座ると本を開く

そんなアタシを見て加賀見くんが口を開いた

「さっき、俺のことなんて呼んだ?」

「え?・・・・加賀見くん?」

「何その堅苦しい呼び方、俺はさきちゃんって呼んでるのに、バランス悪くない?」

お互いの名前を呼び合うのに、バランスなんて考えなきゃいけないの?


「そう言われても・・・・」

「とうま」


アタシは躊躇した

「妹の彼氏を呼び捨てにはできないよ」

「んじゃ、とうまくん」

「とうまくん?」

「そう」


ふっと全身に走る思い
確認するように再び口に出す


「とうまくん」

「何?」

「とうまくん」


名前を呼んだだけなのに心臓がぐっと縮こまって苦しくなった



「何っすか?」



満足そうに笑みを浮かべながら答える彼に釘付けになってしまって、ごまかすように「呼んだだけ」・・・・そう伝えた