聞こえてくる軽快な音楽に感慨深げになっていると、突然横からのびてきた腕に口を押さえられて体をひきずるように近くの部屋の中に入れられるとパタンとドアがしまった



驚いてその手から逃れて、ドアに手をかけるとそれを拒むようにドアをおさえつけられた





「逃げないで」





その声は


振り返ると、顔に少し傷が残るとうまくんがアタシ越しにドアを押さえたまま立っていた



黒のTシャツの上に少し厚手のチェックのシャツを羽織っていつもより少しカジュアルな彼

無造作にととのえられた髪型が、慌ててアタシを捕らえたせいか少し乱れていてアタシの気持ちを揺るがせた







「逃げないで」






再び告げられた泣きそうな彼の声が切なくて

アタシは痛そうな赤い傷を残す口の横に手を伸ばすと、指先でそっと触れた