人々のざわめき、張りつめた空気、照りつける陽光、目の前に広がる闘技場。

 ぼくは一人でその光の場へ歩を進めた。

 フォウはと言うと・・・多分、宿の部屋にいるかも。実は、今日はまだ一度も顔を合わせていないのだ。

 昨夜から部屋に閉じ籠もりっ放しで、朝食にも顔を出さなかった。

 フォウが見に来てくれないと、張り合いが無いなぁ。いっそこのまま棄権してしまおうかなとも思ったけど、そうしたら、お爺ちゃんがうるさいだろうし・・・

 そんなわけで、なんとなく乗り気の無いまま、ぼくは、自分の試合に臨んだ。

「東、雷神流剣術カーン・ライディ」

 ああ、ついに呼ばれてしまった。

 ここまで来たら、相手が誰であろうとやるしかないな。

 光の満ちあふれる闘技場の中央へ進み出る。

 歓声が沸き起こる。

 一応、ライディ家は古流剣術の名門で、雷神流を名乗っている。結構名の通った流派なのだ。

 だから、こういう大会での期待も高い。

 うう、あまり人前で戦うなんて事はやりたくないなぁ。

 とはいえ、ここで戦っておかないと、路銀が無くなってしまう。

 闘技場の反対側に人影。

 僕の対戦相手も入場したらしい。

 いったい、どんな人でどんな名前なんだろ。