「そして、あなたは負けを認めるわ」

 フォウが既に決定された事項のように言った。

「ぬぬ、儂としたことが、またも制言師を見誤ったか。致し方ない、儂の負けじゃ」

「師匠!」

「伊玖麿よ、負けを負けと認めるのも侍の心得じゃ」

 そこで、大きな銅鑼の音が闘技場にが鳴り響く。

「勝者、東、カーン・ライディ、フォーフールズ・イクスォール組っ!」

 歓声が沸き起こり、闘技場内を渦巻く。

「カーン・・・」

 音の洪水の中、フォウが、ぼくのそばに寄ってきた。

 少しフラフラしている。大丈夫かな?

「どうしたの、フォウ」

「さすがに、一流の剣士ね」

 それってぼくのことかな。

「あの爺さん」

 ああ、乱厳さんのことね・・・

「剣を向けられた時の怖さが今ごろ来たわ」

 よく見ると、フォウの身体は小刻みに震えていた。