こっちが今の生活の拠点なのだが、まるで別世界のようだ。高い城壁に囲まれた城と街。人々は生き生きと生活している。街には商店が立ち並ぶ通りや住宅だけの通り、街の中心には噴水まであり、この国が今戦争中だという事はとても信じられない。
そして雄大な城。
この国は世界でもなかなか大きい方であり、俺が産まれ育ったあの村もこの国の領域である。
あの日、死に物狂いで逃げて逃げて力尽きていた俺を助けてくれたのが、この友の父親であった。
俺達は城のすぐ横にある兵舎に借りていた馬を休ませ、城の中に向かう。
二度目の城。真っ赤な絨毯が王の元へと導いてくれる。謁見の間はそれほど遠くなく、扉を目の前にした時やっと、自分が緊張しはじめた事に気がついた。手の平が汗ばんでいる。
キーッと扉が開き、謁見の間が目の前に現れた。
既に何名かの雄志の姿があった。
入る前にまず一礼をし、ゆっくりと中に足を進める。
「おおっ!そなたオニキス!オニキスではないか!」
声をかけてきたのは、この国を統べる者。ユリアス王その人であった。
俺はまた深く頭を下げ、頭を下げたまま答えた。
「お久しぶりでございます、ユリアス王様。オニキスでございます。」
隣にいた友も頭を下げる。
「そなたまで戦に加わってくれるのか。何と心強い。…大きくなったな。」
王は十年前のあの日を思い出した。

「何!?あの村から生還した者がいるのか!?」
王は叫び、玉座から立ち上がった。
「はい。街の者が外から戻る時に倒れていた少年を見つけ、家で看病をしていたとの事。その少年がどうしても王に逢いたいと言っているようで…。」
城門の守りについていた兵士が、困り顔で王に説明をしている。
「良い!すぐ通せ!」
王は興奮していた。