俺はまたこの森の中にいる。
目を閉じてさえいれば、昔と何も変わらない平和な場所である。
ザーザー
聞いているだけで、心が落ち着いていく。
ただ目を開くとここは、世界を一変する。
無残な土地だ。人々の笑い声がたえなかった家達は崩れ落ち、それはそのまま残されていて、まだ死臭がする様な気がする。焼け残った物達も腐り果て、自分が生活していた場所ではないのではないかと錯覚を起こす。
あれから十年の月日がたった。
俺は十七歳となった今日この日を、この産まれ育った村を滅ぼした国に戦いを挑む日と決めていた。
地面に腰を下ろし、静かに手を合わす。
(遅くなったけど、皆の無念をはらしてくる。だから、安らかに…どうか安らかに眠っていてくれ。)
ザーッザーッ
それに答えるかのように風が吹く。

「そろそろ戻ろうオニキス。初めての戦にビビったとナメられる訳にはいかない。」
俺の名を呼ぶ声に覚悟を決める。出陣の時は刻々と近づいていた。
「ああ。」
(じゃあ行ってきます。必ず勝って戻ってくるから。)
俺は立ち上がり、ずっと一緒に修行をつんできた友と共に、第二の故郷へ戻るべく、馬を走らせた。