ばれないように深呼吸をして、頭が冴えてくると。
ある問題が脳内に浮かび上がった。いや正確に言えば思い出した。
そ、そうだった。
忘れちゃいけないこと忘れようとしてた。
…ど、どうしよう聞いてもいいかな…、迷惑じゃないかな…いやでも今聞いとかなきゃ駄目だしな…。
ぶつぶつと考え込んでいると、すっと彼が一歩下がった。え、と顔を上げたら、彼は落ち着いた声色で言う。
「…じゃあ、これで」
え………!!!
行っちゃうの!?
いや、ちょ、まっ…!
――そう、考えてる暇はなかったんだ。
「…〜〜あのっ!」
「え?」
慌てて大きな声で呼び止めると、立ち止まった彼は不思議そうな顔をして首を傾げている。
ほら、うん。今聞いとかなきゃ今日他の人に会えるか保証はないわけだし!うん…!行け!私!
「…あ、あのっ、」
「…?」
「―――おっ…桜乃宮学園ってどこにあるかわかりますか…!」
「は…?」

