目の前から歩いてくる三人はまだ、私の存在に気付いていない。
ならば好都合。
「どしたん、下向いて」
「ちょっとボタンが、」
「あんた服にボタン付いてないやん」
もし見つかったらどうなるやろ。
あの人らの事やし拉致?
いやいや勘弁。
ってかなんでいるんですか。
下を向いたまま、彼等とすれ違う。
気付かず、そのまま歩いて行って。
「はぁー…」
「今の人等、めっちゃ男前やね」
「一人はね」
「え?知り合い?」
「いや、」
苦笑いを浮かべながら顔を上げる。
もう一度溜め息をついた、その時。
「ゆいさーん、無視っすか?」
我が愛犬。
後ろから普通に登場。
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