「ほなありがとう」
「んー」
鞄と紙袋を持って、車から降りる。
ドアを閉めて窓を開けたままの雄大くんにお礼を告げて。
なんか拉致られてよかった。
色々話せたし。
「なぁゆい」
「ん?」
「全てがオトシマエで解決するわけちゃうからな」
「……………」
「とりあえずその兄貴って名乗るやつにあんま近寄んな」
「…分かってる」
歩き出し、背を向ける私に投げられる言葉。
雄大くんもやっぱり大人やな。
合い鍵を取り出し、オートロックを開ける。
振り返ると黒塗りベンツはもういない。
「分かってるよ」
二人が警戒するなら尚更のこと。
私は更に警戒するしかない。
今は、それしか出来ない。
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