「は?」
音楽が掛かっていない車内に響く、雄大くんの焦った声。
隣では英寿くんも目を見開いていて。
私はタバコを灰皿に押し当てた。
「いや、てか龍の家族って生きてたんや」
「らしいね」
「つかアイツの昔の話とか知らんけど」
そう、私以外龍の過去を知らない。
孤児院育ちも、それからも。
それらは決して、
「普通の環境で育ってはない、かな」
可哀想、なんて言えない。
見下してしまうような言葉だから。
けど私の周りには普通の環境で育った人は少ない。
雄大くんも、英寿くんも。
だからこの二人は深く話さなくても分かってくれる。
そう信じるから。
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