「ほなね、」









手を振り、ハンドルを回す。

吹かす音は夜中ほど響かない。




足を離し、バイクに置いた。

その時、











「ゆい」


「え?」


「白虎連合二代目総長、よく勤めたな」









振り向けば、優しい目で見つめる二人。

胸が、熱くなった。






もう私は二人の背中を追えない。

私は今日から族じゃない。




ただの先輩と後輩。

それでも、私には。










「まだ言うの早いやろ」


「ははっ、せやな」


「今日の引退式、ちゃんと二人とも来てや」


「あったりまえっ」


「うん、ほなバイバイっ」










涙は流さない。

それは、まだ流さないだけ。







再びハンドルを回し、二人に背を向ける。

後ろから聞こえる雄大くんの声に耳を傾けながら。











「…ありがとうございます」











小さな声は風に流れる。

それだけで、充分。














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