さっきまでうるさかった心臓は静かになる。
代わりに、握った拳が揺れた。
一才にも満たない俺を捨てた親父。
ただ名前を書いた紙も残して。
何度も何度も何度も、迎えにきてくれることを願った。
顔も知らない家族をひたすら待った。
全然顔も覚えていないのに。
目の前の親父は尚輝以上に俺に似ていて。
「ほな早速、私の所に来てもらった理由を話そか」
「…いらん」
「は?」
「お前の話なんか聞かへん、お前が俺の話を聞けや」
ジャラ、とズボンに付けてるチェーンが音を立てる。
真っ直ぐ、目を逸らしたくない。
ゆいさんは、いつでも逃げなかった。
大量の族が学校に来たときも、紫織さんを守るときも。
英寿さん以上になる為。
こんなとこで逃げるわけにもいかへんやろ。
「病院は継がへん、これ以上俺に関わんな」
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