突然、後ろから聞こえた声。 振り向かなくても誰か分かる。 「尚輝、」 「俺も一緒に乗るから早くしろ」 「行くわけないやろ」 「いつまでも逃げられるわけないって」 「黙れ」 瞬間、威嚇するように窓ガラスが割れた。 冷たい雨と風が入ってきて。 皆が一歩下がる。 私は外を見つめたまま。 白いリムジン。 行き先は病院、もしくは天海家。 そこに行けば龍は留学。 決められたレールの上を歩くだけ。 「龍」 「なんすか」 鼻が、ツンとする。 拳を握り涙を耐えた。 「お父さんとこ、行ってき」 .