最後に余裕のある笑みを尚輝に見せる。

本当は余裕なんてないくせに。





腕を尚輝の首から離し、歩き出した。










「守ってあげな、助けてあげなあかん」


「…………」


「その強気がいつまで続くんやろなー」


「…………」


「本間は彼女として傍にいたいんちゃうん?」








何もかも分かってるような言葉。

それを聞き、足を止めた。




ゆっくり振り向くと無表情の尚輝。

私も、無表情。








「お前らがそれをさせへんのやろ」









冷たい廊下に悲しい言葉が響き渡る。

それでも私は表情を変えなかった。









「言い忘れたけど、龍に親父の病院へ来るように伝言」


「……………」


「それでも来ーへんかったら迎えに行くって」


「本間、自分勝手やな」









今度こそ歩き出し、背を向ける。

もう振り向く必要もない。







振り向きたくもないし。









.