「しかもさ、待ってる間ドキドキでしょ?」

ユキの両肩に手を掛け、わざと耳元に口を寄せて話すマモル。

「楽しみでワクワクするでしょ?」

耳にかかる吐息で『クチュッ』という甘噛みの音がユキの脳裏に蘇る。


固まって顔を赤く染めてゆくユキ。


「わ、わかったから、もうやめてよ!」


こんな人ごみの中じゃ丸見えよ!!


照れた顔を慌てて背けて、ユキは悔し紛れのセリフを吐く。


「まるで『吊り橋』。展示品目の前にしたらきっと最高の気分だわ」

「だろ?オレって優しい策士〜。ユキちゃんの気分を盛り上げてるんだ」

「流石『吊り橋』をきっかけにするだけあるわね!」


貶されたというのに、満足気な笑みを浮かべるマモルにドキドキが収まらないユキ。



マモルはユキの鼓動を操る策士。

とは言っても、鼓動を早める方専門で。

こうしてユキはいつも『吊り橋』からマモルを見つめる羽目になる。



きっかけは『吊り橋』で。

でも二人はその後も『吊り橋』で出会う。