「・・・うぇ」


向かった特別展示は大盛況だった。最後尾の見えない長い列が展示館から伸びていた。

あまりの盛況ぶりについユキの口から漏れた不満。

それを耳にしたマモル。

「ユキちゃん、今帰ろうと思った?」

尻込みするユキを後押しするようにぴたりと背後に回っていたマモルの声が頭上から降ってくる。

「う・・・ん。正直言って」

ユキの歩みは既に止まっていた。

展示館はまだ先だというのに足が前に出ようとしない。

ここは、美術館のある広い公園の端っこにすぎない。

「ユキちゃんは今日を逃したらきっと来れなかったよ?」

ユキが顔を上げて視線を合わせると、

「あんなに長い列、一人で待ってられないだろ?」

小学生に言って聞かせるような声音のマモル。

「・・・そうだけど、今日見るとは言ってないよ」

ユキはすっかり怖じ気づいていた。

待ち人の列が長過ぎて。

今日中に見られるのかどうかもわからないくらいの長蛇の列。