着信の相手は、『守』。

内心舌打ちをして、電話に出る。

『ユキ、また帰ろうとしただろう』

確認というより、確信に満ちた戒めるような声音。

でも艶っぽさは健在で。

正直聞き惚れたことが恥ずかしくて突っ慳貪に答える。

「見てたの?なら早く来て。でないと帰る」

待ち合わせ相手に詫びる気もしない。

だって。

「また隠れて見てたんでしょう!?」

今更隠しても無駄というもの。

『もう後ろにいるってば』

振り向くと、マモル。

ケータイの通話を終わらせて。

「特別展、行くんでしょ?」
「行くけど、一人でだって行けるし」

ユキも通話を終了させて。

マモルはユキの隣まで来て何事もなかったように背中を押してエスコートするから、ユキも歩き出す。

帰り道とは逆の方向へ。

「だから待つ必要ないって?相変わらずツレナイなー、ユキちゃんは。でも一人で行くにしては、方向が逆だったけど?」

「今日じゃなくてもいいかと思って」

だって。

「待ってて疲れちゃったから」

私がにっこり笑うと、

「・・・全く。ユキちゃんの『待ち』ギライときたら」

マモルは楽しそうに微笑んだ。