息を乱し、街中を走り抜けた。どこにも行く当てがなく、ただただ走った。
町は奴隷身分ではない人々で賑わっていた。楽しそうに笑っているのが、魅楼には残酷に見えた。何も知らずに笑っているのかもしれない。知りながらも見ない振りをしているのかもしれない。同じ人間が、ゴミ以下の扱いを受けている事に。
無知は怖い――
足を止めることなく、急ぎ足で町を走る。

――ふと足を止めた。
ここはどこだろうか。気が付けば知らないところに来ていた。
辺りを見れば、木しか見えない。葉が靡き、葉が掠れる音が聞こえる。空を見れば、紅く染まり、日が落ちかけている。
ハッとして魅楼は後ろを振り返った。
方向がわからない。光の国にはどっちに行けばいいだろうか。
魅楼は冷や汗をかいた。焦って、目の前に立ちはだかっていた葉を豪快に掻き分けると、音に驚いたカラスが鳴いて翼を広げ、空に飛び立った。
魅楼にはここにいてはならない大きな理由があった。
光の国と闇の国で大昔から戦争が起こっていた。その主な理由は、太陽と月の取り合いから始まったのだった。