光の国の人々は焦りを感じていた。その多くの理由は後継者が老いていくことからだった。次期後継者は、後継者が役目を終えたとなれば生まれてくるという摂理なのだ。だが、次期後継者は生まれてこなかった。現在の後継者が老いて、寿命を感じていても、次期後継者は生まれてこなかった。それは長年の中でも異例であった。
それに加え、今光の国では国内での争いが激発していた。
一人の青年からの人々の反発からである。
平和と平等を願う国民は、後継者を憎んだ。後継者親族を憎んだ。政治をも憎んだ。
無理な税金を払わせようとする。「お国の為だから」と言って、暴力を振るい、働かせる。奴隷身分など、あってはならないはずなのに。
青年は、正直なその性格から命を落としたのだ。
後継者親族はあざ笑った。「反抗的なことをしたから、当然の報いだ」と吐き捨てた。
だが、国民は違った。勇敢な行動から尊敬の念を強める人々が多く、その事件をきっかけに、奴隷身分の人々は団結した。
そして始まった戦争。
両方、大量の死者を出した。町を歩けば血で紅く染まった建物が痛々しくも見えてしまう。地面を見れば、腹を刺され、踏みつけられた哀れな死体が晒されている。
争いは争いを生む。
だが、どちらも自分たちの立場を守るためのもの。それ故、反論は許されない。

ある日、後継者親族で動きが見えた。
ちょうど、戦争が始まって4年後の朝の事だった。次期後継者が生まれたのだ。親族は待ち望んだ赤子を、泣きながら祝福した。
だが、国民たちは赤子を忌み嫌った。戦争故か、身分制度故か。どちらにしても、良好な状況ではなかったのは確かだ。
戦争は尚も続いた。
――そして十五年後、後継者が天寿を全うしてしまい、不安定な国が目立った中、それでも耐えた親族たちは喜んだ。あの時の赤子は、しっかり育ち青年と呼べるほどに成長したからだ。親族は青年を魅楼(みろう)と名付けた。

魅楼は考えていた。
生まれてからずっとずっと戦争が起こっているこの国は、何故争っているのだろうと。
悲しくて、辛くて、町に積まれる多くの死体を直視する事が出来ずに居た。優しく、思いやりのある子だった。
国民は次期後継者がどのような子か教えられていなかった。故に、次の後継者も身分制度をやめない、冷酷な者だと思い込んでいた。