争いは続く。歴史は深く、その為に死んでいった者の想いさえ届かない。
この世は一つになることを許さなかった。
決して光と闇は相容れぬと誰かが言った。その考えに納得できない者もいた。だが、相容れぬことは正論だと、国の歴史は物語っていた。悲しき現実。

権力を自分の力だと思い込んでいる者がいた。権力を使って人間を恐怖で縛りつけ、洗脳させ、駒として扱う。
誰もがその扱いに不満を持った。そして、恐怖に駆られた人々を、ある事件が動かさせた。

ある時代の光の国には酷い差別があった。
後継者と呼ばれる、国を統べる者の親族に権力を。そして国に金を払わない国民に奴隷義務を。この時代は、国民にとっては地獄であった。

この時代では、貧富の差が激しく、国に税を納めることも難しい人々がいた。だが、この国のその時の後継者(権力者)はそれを許さなかった。税が納められなくなった時点で役人をよこし、逮捕するのだ。
逮捕された人々は奴隷として扱われる。これこそ物のように。
一日中働いているのだ。疲れているのにも関わらず働かせ、動けなくなったとなったら鞭を使い、それでも駄目なら処分。つまり殺してしまうのだ。
そんな時代の中に、勇敢な青年がいた。正義感に溢れ、奴隷身分になりながら、一回も休むことなく働いた。どんなに疲れても、どんなに辛くても手を止める事がなかった。倒れている人を見かけると放っておけない人だった。今の時代には珍しい性である。

――そんな青年の目の前で人が殺された。
青年は叫んだ。喉が潰れそうになっても、叫ぶ事をやめられなかった。目の前は暗くなり、眩暈がした。そして怒りがふつふつと煮えていた。
「おい、何してる。早く持ち場につけ」
見張りの男が叫んだ。青年に向けられたものだった。青年は男の方を睨んだ。ありったけの憎しみと蔑みをこめて。
そんな抵抗も空しく、男は仕置き用の鞭を取り出した。
「お前、なんて生意気な目つきしてんだ。そんな虫けらの死骸なんかに付きまとってないで仕事しろ、仕事。お前の役目を忘れたか?あ?お国の為に働けや」