不安は運命の一言を生み出した。
「やっぱり僕は、ギルディとは相容れないよ」
アートは静かに言った。
ギルディは言葉の意味が理解できずに、目を見開いた。
やがて、言葉の意味を理解したのか、アートがいるであろう闇に近付いた。
「な・・・に言ってんだ。俺ら、親友だろ?俺はアートと一緒にいたい」
胸の鼓動が激しくなるのがわかった。
ギルディは不安と寂しさで頭を抱えた。胸に手を当てた。鼓動を感じる。尋常じゃない速さにギルディは思わず手を離した。
「所詮僕らは、自分たちで壁を作ってたんだよ」
ギルディは首を振った。
「でも俺らはその壁を少しずつだけど壊して、互いに理解しようとしてるじゃん」
必死の説得だった。
アートは少ない理解者だった。ギルディが闇にいれないのと同時に、アートは光にいれないのだから。だからこそ、離れたくなかった。
「じゃあギルディ。お前、僕に会いに来れる?その壁を越えてさ。僕は無理だ、光には居座れない。理解者と言えるのだったら、来てみなよ。恐怖に・・・勝てるのなら」
その言葉にギルディは悟った。
もう一緒に入れない。アートは優しかった。だから闇に恐怖を抱くと知ったアートはギルディを闇に近づけなかったのに。今は入ってみろと言っている。
壁は、越えられるはずなかった。闇に入れば呼吸さえ、忘れてしまうのだから。死ね、と言っているようなモノだから。
「駄目、なのか」
ギルディは息を吐いた。胸の鼓動が頭にまで響いてくる。
どこかで、引き止めて欲しかった。「やっぱり一緒に居よう」と言って欲しかった。
だが、期待は消え去った。
「うん」
アートの声に迷う素振りはなかった。
闇に溶け込むアートの体が微かに動いた気がした。
ギルディには、手を伸ばすことしか出来なかった。伸ばした手は強く握り、下に下ろした。震えている手を無理矢理押さえた。
「そうか」
ギルディは目を細めた。
どこかでこうなるんじゃないかと思っていた。だから覚悟もあった。