ある時代のある時、大変仲が良い神が二人いた。
友情にかけては誰にも負けない硬い友情で結ばれていた。
光を好む神、ギルディ。
闇を好む神、アート。
光は闇に相容れぬことはない。闇も同じだ。好むものが違い理解しがたい二人だが、それでも理解しようとし、だからこその友情だった。
アートは闇を好むばかりに、暗いところへ吸い寄せられていた。
まるで、闇に手招きされているように。光の下に居れば、アートは魂が抜けたように生気が抜け、抜け殻のようにぐったりする。そしてギルディが気付いた頃にはアートは闇の中に溶け込んでいた。アートは暗闇で怪しく微笑んでいるのだ。
ギルディは光を好むばかりに、明るい場所に居座った。
ギルディにはアートのように吸い寄せられるという事はなかったが、単純に闇に恐怖を感じていたのだ。闇に居るだけで、自分が自分でなくなるような気がして、怖かったのだ。
それ故、二人は一緒にいることができなかった。

ある日、ギルディは言った。
「なぁ、アート。やっぱり俺らは一緒にいるのは間違いなのかな」
物陰に隠れるアートに向けての言葉だった。気配はあるが、返事が返ってこない。もしかしてアートじゃないのだろうか、と錯覚を起こしてしまいそうなほど静かだった。
だが、間を空けてゆっくりと言葉が返ってきた。
「・・・いや、僕らに間違いなんてないよ。ただ好むモノが違うだけ」
散々考えたのだろう。はっきり言ったのにも関わらず、自信なさげだった。震える声はそれでもギルディの耳に届いた。
ギルディは笑った。
「だよな、そうだ。アートの言う通りだよ」
ギルディは吹っ切れたように軽快な声を立てて笑った。
アートも聞こえないように、静かに笑った。
だが、アートにもギルディにも計り知れない不安が脳裏に過ぎる。
もしかしたら、自分を理解してくれていないのかもしれない。上辺だけの言葉なんじゃないか。自分が友達だと思ってるだけなんじゃないか。
不安は思えば思うほど膨らむモノだった。