有料散歩




「さて、春樹くん。」

「なに。」

砂糖をたっぷり入れたアッサムティーを飲みながら春樹は夏へ視線を向けた。

「俺達のこれからを決めなきゃなんないからね、その話し合いをしよう。」

「うん、でも僕、体弱いから。たぶん夏くんあんまりすることないよ。」

夏はにんまりと笑う。

「んなことはない。家事っつーのはエンドレスだ。でも決めなきゃなんないのは、俺の仕事じゃなく春樹くんの生活のことだよ。」

「僕の。」

病気の事は母さんから伝わっているはずなのに、と不安な表情の春樹を見て夏は笑う。

「君は今年から高校生だろ。」

「うん。…でも学校は行けないから、通信教育で卒業資格とるんだよ。
だから僕は勉強と、食事と、睡眠、くらいしかやることってないし。」

ふぅ、とカップの紅茶に息を吹きながら春樹はつぶやいた。
紅茶はもう冷めている。

「違くて。」

「え。」

「勉強と、食事と、睡眠。そんなのは当たり前だってこと。それ以外だよ。」

「…僕、趣味とかはないし、テレビを見たり本を読んだりくらいしか思い浮かばないよ。」

なるほど、と夏は頷く。

「よしっ!じゃあ俺が春樹くんの一日のタイムテーブルを決めてあげよう!」

「はぁ。」


夏は立ち上がって、電話台に置いてあったメモとペンを手にした。