どんな時にも変わらず朝は訪れる。

昨日よりも確実に命の息吹が増えた小さな山にも、眩しい太陽が昇った。

東側の部屋には、カーテンをものともせずに朝日が差し込む。

ベッドの頭の方にある窓から、まっすぐゆきに向かってくる光の筋。

薄い意識の中で、うっとおしく思っていたゆきだが、観念して瞼を開けた。

一瞬ここがどこだかわからなくなる。
見慣れない部屋。
見慣れない天井。


昨日からの延長にあるはずの今日。

昨日のことがゆっくりと頭を巡っていく。

ああそうか…と思い出し、静かに体を起こす。

階下では人の気配。

春樹か、夏か。どっちもか。


朝日の眩しさからして、まだ早い時間だと思われるが、この家はもうすっかり目覚めの空気に包まれていた。

まだ着替えがないゆきは、昨日と同じ服に着替える。

借りた寝巻は畳んでベッドの端に置いた。


とんとんと階段を下りていくと、春樹と夏の会話が聞こえてくる。


「春樹くん、ゆきちゃん起こしてきてよ。」

「え、昨日は疲れただろうしゆっくり寝かせてあげようよ。」

「だめだめ。朝ごはんは一緒に食べるのが決まり。」

「誰が決めたの?」

「俺。」

「もう。この家のルールってほとんど夏くんが決めてるよね。ハウスキーパーのくせに。」

「いやいや、照れるね。」

「褒めてないしっ。」

「まぁまぁ、ご飯は皆で食べるからおいしいし。早起きは健康にいいし。早くゆきちゃん起こしてきて?」

「はいはい…、」

観念して体を反転した春樹の目の前にゆきは立っていた。

「おはようございます。」

「あ、おっ、おはよ。」

「あれ、ゆきちゃん早起きだね。丁度春樹くんに起こしに行ってもらうとこだったんだ。」

会話を聞いていたので知っている。

「あの、タオル貸してください。」

「あ、顔洗うのね。春樹くん出してあげて。」

「うん。こっち。」