夕食を済ませ、母さんは帰って行った。
父さんが仕事から帰って、お腹を空かせて待っている家に。
今夜のゆきの寝巻などは母さんのを貸したらしい。
いつの間にかすっかり仲良くなった母さんとゆき。
きみさんと呼び、ゆきは母さんが帰るときに玄関の外まで見送った。
今更だが、母さんの名前は貴美子という。
貴美子が帰り、この家のレギュラーメンバーがリビングに集った。
もう夜も更け、時計は11時を指そうとしている。
ゆっくり眠れるように、と夏が煎れたホットミルクをゆきはゆっくり飲む。
隣では春樹が英語の勉強をしている。
さらにその斜め向かいでは、夏がネイティブさながらの発音でテキストを読み上げていた。
お風呂でゆったりし、まったりホットミルクを飲んでいたら、うとうと。
「あれ、ゆきちゃん眠い?」
かくんと船を漕いだゆきに、夏が声をかける。
「うん。…少し。」
「じゃあもう寝な?」
「でも…」
「春樹くんもそろそろ寝ないと、明日起きれないから終わりにしようか。」
ふあっと欠伸をして、春樹はペンを置いた。
「いつ夏先生がそう言ってくれるか待ってたんだ。」
「はは、げんきんだな。じゃあ二人ともちゃんと歯磨きしてきな。」
「うん、ゆきちゃんの歯ブラシ出してあげる。来て。」
眉山を持ち上げてようやく開いている瞼をこすりながら、ゆきは春樹の後についていく。
後ろ姿は仲の良い兄弟みたいだ。
春樹もゆきも華奢で、背中がどこか似た雰囲気。
にんまり、夏は微笑ましい光景に心が温かくなった。


